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日高ショーコ作品初の長編「花は咲くか」全5巻
オススメBLコミックを伝えるこのコーナー、記念すべき第1回目は、人気漫画家の日高ショーコ先生のオススメBL作品をご紹介します!
※この記事は2020年 リライトによる再掲載です。
アラフォーリーマン(攻め)と美大生(受け)の「年の差」BL
日高さんのBLマンガはすべておすすめで「憂鬱な朝」、「初恋のあとさき」、「嵐のあと」、「知らない顔」、「シグナル」など、それぞれの作品のクロスオーバーエピソードになっている部分など、いずれ別ページに書き出したいけれども、さしあたっては、『花は咲くか』にスポットをあてたいと思います。
平たく言うと、アラフォーリーマン(攻め)と美大生(受け)の「年の差」BLといえます。しかーし!「年の差」だけじゃなく、バックボーンが結構ずっしり二人の関係性に影響してくる点が、この作品の見どころでもあると考えます。
最初は、情景と余韻を楽しめる、穏やかな“空気”を感じるテンポといいますか、ゆっくり進む印象だけれども、主要キャラたちの感情の高まりととも徐々に展開が加速していくって感じでした。
読後感として、
「優しく穏やかな日常を一緒に送る相手を思い浮かべる。そんな恋の始まり方を知るのに、年齢って関係ないよな。」
と思った自分がいます。
2巻表紙の桜井さんがドストライクですよねぇ。
髪型、目つきとか表情、肌の色、ネイビーのジャケット(←そこ?笑)、年齢の割にコロコロ表情を変えたりするところとか、かと思えば年相応の寡黙な表情を見せたりとか!
大人だけど、割と枯れてるけど、なんか初々しい!
モロなエロいシーンが基本少ないものの、そこに行き着くまでのプロセスで魅せてくれる作品です。
単にとんとん拍子とはいかない、それでいてじれったくもない、リアルな会話や感情の展開に引きつけられるのかも知れませんね。
『花は咲くか』のあらすじ
最初は、嫌いだった───
大手広告代理店の企画部に勤めるアラフォーリーマン桜井。
いままでつきあった女は皆離れていくし、
その理由はいまいち熱心になれない自分のせいだとも感じていた。
だから買ったマンションで、誰かと住む予定がないと分かっても、それほどショックにならない。
そのうえ働きざかり疲れ知らずな若き日とは違い、ワーカーホリックぎみに仕事していることで、知らずのうちに心身ともに枯れ始めていた。ちいさい頃から、植物を育てることが苦手だった。すぐ枯れてしまう───、
一度も花を咲かせることができなかった。
と、こんな感じです。
好きだと思って始めたことも、最初の「熱」も、どうして急に冷めてしまうのか。
そもそも、熱くなったことがいままでなかった。
桜井はそんな男だったようですね。
そんな彼が、ひょんなことから縁あって知り合った蓉一へ、本当の恋をしてしまう。
年の差一回り以上、男同士、社会人と学生…と、障壁の数がすごい。共通点も美大つながりしかないのに(しかもグラフィックと油絵…、一見相容れなさそうなジャンル…)、なのに気がつけば蓉一の言葉にいちいち反応して落ち込んだり、ドギマギしたり、浮き足立ったり…。
いつのまにか蓉一を想っている自分に気づいた桜井の心には、初めて熱い恋の蕾が芽生えます。
『どうしよう こいつって…、こんなにキレイな顔してたっけ…?』
引用元: Renta!より
こんなに誰かを好きになることができるなんて、考えもしなかった。
引用元: Renta!より
がんばれ桜井さん!夢にきらめけ明日へときめけ。
一方、幼い頃に両親をなくし、父親側の親戚や周りの大人達からすると、まるでトレースを引いてるかのように父親と同じ絵描きの人生を無理して背負おうとしているように見える美大生の蓉一。
「自分の意思がまるでない、大人に過保護にされた、何考えてるのかわからない奴。」
蓉一はそういった印象を周囲に与えるふしがありますが、実は違うんですよね。
父親の代わりではなく、本当に絵が好きだから描いている。
自分の意思もある。
問いかけたい疑問も持っている。
そういった自分でも気づいていなかった本当の自分に、彼もまた、桜井と出会うことで気づいていきます。
恋をしたんだという自覚とともに!
熱さを知らない蓉一と、熱さの加減をどこかに置いてきた桜井さんとが出会って、変わるべき部分を見出していくことで、二人の間には果たしてどんな花が咲くことになるのか。
まとめ:誰かの花でいたいし、花を咲かせたい
大人になろうとしているもの。
大人になったつもりでいたもの。
いくら処世術を備えても、
自分の行動が不利に働くときもあるし、有利に働くときもある。
だけど人はいつだって、誰かの花でいたいし、一緒に花を咲かせたい。ってことだなぁ…と、なんか浸っちゃいましたー。笑
桜井と蓉一の物語は、ゲイである僕にとってのこれからの人生のなかで、きっと糧になるストーリーだと思うんですよね。
え、桜井さんがいい。桜井さん以外考えられない。リアル桜井さんに会いたい。桜井無双状態。
※追記:あーだこーだしているうちに、5巻で完結!最終巻は特装版ではないか。
どうやら花は咲いた模様。
そして押し寄せる桜井ロス…。
余談:最初に涙したシーン
「花は咲くか」には、たくさん名シーン・名言があります。
そのなかで最初に涙したシーンといえば、
蓉一の親戚の菖太という、こりゃまた訳ありな高校生が、自分の父親(つまり蓉一の叔父)が蓉一へ言い放った言葉に対して腹を立て、その場から立ち去った後に感情が溢れ出るシーン。
『せっかくヨウちゃんが初めて俺のこと庇ってくれたのにさ
ヨウちゃんにまであんなこと言って!
あれはぜっったいに言っちゃだめなのに!』
と、高校生ながら蓉一のために悔しさあまり涙して叫ぶ菖太っち。
普段飄々としてる彼が涙するあのシーンは、油断していたので読んでるこっちも泣けちゃいました。
いまでも思い出すと泣ける…、菖太の十代ならではの体当たり感と優しさの表し方が三十路の僕にはまぶし過ぎる。(褒め言葉である)
菖太っち、あんたイイ仕事してるよ。笑
というか隣で菖太をあやす竹生(従兄弟)ともっとくっつきなさいな、ほれ。
菖太以外にも、桜井さんのライバルとなる蓉一の同級生・藤本や、やり手広告ディレクター柏木&蓉一の家の管理人吉富さんといったオヤジーズのセリフも心に響きますので、そのあたりも気にしながら読むと、より楽しめると思いました。
というわけで、
初見でしたらおすすめです。是非!
ちなみに:『日高ショーコ』名義は二人組
公式twitterを拝見して初めて知ったのは、『日高ショーコ』さんは、絵・日高ショーコ/原作・タキエの二人組だということ!
才能と才能の掛け算だったわけか、…すごい。
※作品配信情報やイベントなどの詳細は公式Twitterでチェックしていきたいと思います。
そういったチーム構成は、CLAMPしか知らなかった…!(「東京BABYLON」、「X」での昴流のターンが好き。)
御見逸れしました。

日高ショーコさんのBL作品、『アンチロマンス』も読んでいます。
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