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今回おすすめするのは小説です。BL好きにもファン多しな三浦しをんさんのバックナンバー、「月魚」をご紹介したいと思います。
当サイトお読みいただきありがとうございます。
BOYSLOVE FOLDER 「月魚」がBL小説としても最強!
BLラバーの心を満たす三浦しをん作品
いやいや、非BLとはいえ侮るなかれ、めちゃいいんですよこの作品。むしろBLよりBLです。笑
※この記事は2020年 リライトによる再掲載です。
ちなみに、
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三浦しをんといえば「きみはポラリス」というオムニバス作品にもゲイのエピソードがありますね。
あとはエッセイもたくさん出版されていて、そこに綴られている内容もBLネタ多いです。エッセイに度々登場する三浦しをんさんの弟がいいキャラしてるんですよね。
「月魚」のなにがそんなに“刺さる”のか
まず冒頭、古書店「無窮堂(むきゆうどう)」へと誘われどんどん導かれていくような、読み手が実際いま足を運んだかのような巧みな描写がおみごとです。ここは読んでほしいですねぇ。
『三浦しをん』と聞くと、「舟を編む」が本屋大賞を獲ったり、「まほろ駅前多田便利軒」が山田ユギさん起用でマンガ化されてたり、とBL好きにとっての話題が尽きないイメージ。なにより作者の三浦しをんさん自身が無類のボーイズラブ好きと公言してらっしゃる。ダ・ヴィンチの表紙で『三浦しをん』と載っているときの僕の食いつき、っぱねーですよ本当に。
さてこの「月魚」。物語の舞台は主に神田神保町。の、古書店「無窮堂」です。
古書に魅せられたふたりの青年、古書店店主の真志喜(マシキ|受けだよね)と、その幼馴染みの瀬名垣(セナガキ|攻めだよね)が、過去のとある出来事にそれぞれ囚われながらも、互いが離れたくない想いからか、大人になってもその葛藤を抱え続けているんだな、と読んでいくうちにわかってきます。
「月魚」のなにがそんなに僕のBLスポットに刺さるのか。
それは、主人公であるこの二人が、幼馴染みと言うだけでは説明がつかない関係という点です。
二人の長きにわたる友情、でもっておそらくそれ以上の熱情が、本編『水底の魚』、『水に沈んだ私の村』と、そして描き下ろしの『名前のないもの』にそこはかとなく散りばめられているからです。
臭う?いやいや、はっきりわかる表現、バッチリあります。
さて、これから読む皆さんは、いったいどのページで確信するのか…笑
「月魚」のあらすじと、思わずにやけたシーン
以下、僕が持っている文庫版の目次です。
- 水底の魚本編
- 水に沈んだ私の村高校時代編
- 名前のないもの文庫描き下ろしエピソード
あらすじ
「あれが俺の禁断の果実だったというわけか」─────。
古書店「無窮堂」の若き当主・真志喜と、その友人で同じ業界に身を置く瀬名垣。
二人は幼い頃から密かに持ち続ける罪の意識をいままでずっと胸に秘めながらも、忘れられぬまま、同じ業界で関わっていくことでなにやら根深い想いを共有しているようだった。 二人が幼い頃、瀬名垣の父親は「せどり屋」とよばれる、古書界のなかでは嫌われる存在だったが、その才能を見抜いた真志喜の祖父に当時目をかけられたことで、瀬名垣親子は真志喜の家に通い詰めることとなり、そこで出会った幼い二人は兄弟のように育っていく。しかし、ある夏の午後に起きた古書をめぐる事件によって、二人の関係は大きく変ってしまう…。月光の中で一瞬魅せる、魚の跳躍のようなきらめきを映し出しながら、二人の男の濃密な感情が、真夜中の月明かりに照らされる物語。
「月は、ひとつ。あなたも、この世界にただひとりの人」─────。
と、こんな感じです。
「あれが俺の禁断の果実だったというわけか」
ほうほう。
瀬名垣がどれだけ古本の世界に囚われてしまっているか、どれだけ真志喜のことで頭がいっぱいなのかが、この一言に集約されている気がします。
思わずにやけたシーン
上述以外に思わずにやけたシーンをご紹介するとしたら、やっぱここでしょう。
「昨夜はよくお休みになれました?部屋が寒かったかしらと
気になってたんです」「いえ、”熱い”くらいでしたよ」
瀬名垣は湯気をあごに当てつつ、澄まして答えた。
こたつの中で、真志喜の強烈なケリがスネにはいった。
声も上げずに突っ伏した瀬名垣に、女は慌てる。
なんでそんなに熱かったの瀬名垣!
あんたやっぱり昨夜、真志喜と・・・真志喜と!笑
火照るくらいの仲なのか・・・、いつ?いつからそんなエロりんちょな仲だったんだ!
と、そのページを開きながら僕の思考回路はショート寸前でした。(←月つながりである←伝わるか)
さらに、もっとも艶っぽいシーンといえば『水底の魚』の最後のくだり。
瀬名垣は、まだ名残惜しげに池を見つめる真志喜を、背中からきつく抱きしめる。
しばらくじっとしていた真志喜は、やがて腕の中で魚のように身を翻した。庭を背にして後ろ手に硝子戸を閉め、瀬名垣をわずかに見上げる。
ここを読み、二人の関係について早合点してなかったことに安堵・・・と、歓喜しました!(ぎゃあぁぁぁぁ)
「月魚」というタイトルにある情景がまさにこのシーンだったりするのかと。
水中から高く跳躍する巨鯉を照らす月の光 ───。
このシーンのみならず、全編に渡り素晴らしい描写が潜んでいて、ページの少なさ、本の薄さからは予想だにしなかった深みのある物語に、ただただうっとり酔いしれましたよ、三十路の男でも。(※追記:悲しかな40代になりましたよ)
「月魚」がアニメ化、マンガ化、実写化するとどうなるのだろうか
ところで真志喜と瀬名垣。二人はどんな顔をしているのだろうか。
もしアニメ化、マンガ化となったら…とつい妄想してしまいます。
「坂道のアポロン」の二人とか・・・(きゃっきゃっ)
古書業界の青年2人が主役のちょい耽美な物語「月魚」。
非BLとしての角川文庫で、かつてこんなに甘い萌えポイントが多い作品があっただろうか。
あったかもだけれど、個人的にここまでハマったのは初めてです。
仮に、この作品がアニメ化や実写化されることとなった場合、瀬名垣の“癖”と真志喜の“ツンデレ”をどこまで表現するかで、印象が変わりそうな気がします。
だって瀬名垣の“癖”、すごく萌えませんか。
瀬名垣は髪フェチで、とにかく真志喜の髪をすぐ触る。なでる。そして見つめる癖。(…そう、確信犯である)
真志喜はそのたびに手を払い嫌がるものの、ときにはじっとしてる時もある。ツンデレりんちょ。
たまに外で瀬名垣が触ると、「どこでもかしこでも髪を触るな。人が見たら、変に思う」と怒るのだけれど、
え、なに?じゃあ人が見てないところならいいってこと?
と瀬名垣の代わりに聞いてやろうと思いましたよ。
瀬名垣が真志喜の家に泊まったときも悶えました。
真志喜が風呂からあがると、毎回瀬名垣はさりげに二つ並んだ布団をピタッとくっつけていて、真志喜がそれを見て「何してるんだ」とすんなり布団を離しちゃうシーン。
あのときの真志喜の顔、動揺してたのか、いつものことかとあきれていたのか・・・
真志喜は真志喜で瀬名垣に身を任せる場面がよぉぉ───く見ると結構ある。
瀬名垣に名前を呼ばれただけで赤くなったり、後ろから抱きしめられ、髪をいい子いい子されたり。
皆さんは瀬名垣と真志喜、どちらがお好みですか?
僕はゲイでウケなんで、当然瀬名垣みたいなワイルド野郎が大好物なんだけれど、真志喜のライフスタイルが結構イメージしやすい描写が多いせいか、真志喜の視点で読んだのを覚えています。
真志喜といえば、
- 繊細で美少年、なのに好物は干し芋や干し柿
- 着流しをこだわって颯爽と着こなすのに、足元はゴム草履
- 器用なのに、壊滅的に運転がヘタ
うん、愛されキャラよね真志喜ちゃん。
それを受け止めるマッチョ(であろう)瀬名垣。尊いが過ぎますねぇ。
まとめ:三浦しをん大先生の作品、もっと読みたいと思いました
ほんとお勧めですので、気になった腐男子・腐女子の皆さんも是非読んでみてください。
高校時代編『水に沈んだ私の村』は“夏”から連想する情景に想い出がある方には、たまらん物語ですよ。
教師目線で高校時代の瀬名垣と真志喜が登場します。花火シーンは、ほんと秀逸です!
あぁぁぁぁぁ、今年の夏に、僕も瀬名垣みたいな男に会いたい!漁りたい!
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「月魚」に出てくる、月光を浴びる鯉や一面の古書たち、プールに投げ込み冷やす西瓜や、校舎屋上から見る花火など・・・読む人の記憶にある素敵と思える煌めきや情景とを共感させ、こんなにも奥ゆかしい文字にして伝えることができる三浦しをん大先生の作品、もっと読みたいと思いました。
とにかくまずは、真志喜の可愛いさにバキュ───ンされちゃってください。笑
そして、文庫描き下ろし『名前のないもの』での瀬名垣の告白に近い発言
「所有欲も愛着も、本当はものすごくあることを自覚している。
いつまでだって撫でくりまわしてじっくり味わいたいし、だれにも渡すもんか
と、いつもいつも思ってるんだ」
に、ドッカ───ンされちゃってください。笑

「バッテリー」作者のあさのあつこ氏のあとがき『月魚によせて』も必読ですよ:)